福島県の三春滝桜や、東京都の六義園の優美な姿が魅力的なしだれ桜。
柔らかく垂れ下がる枝に咲く桜の花が、風になびく姿はたおやかで絵になります。
美しいだけでなく、樹齢数百年の古木もあるほど、寿命の長い品種でもあるんだとか!
今回はしだれ桜の寿命がどれほど長いのか、しだれ桜を庭木で楽しむ方法についてお伝えします。
しだれ桜とは
実はしだれ桜は、一つの品種ではありません。
しだれ桜は「枝垂れ桜」と書く通り、枝が柔らかく下垂する桜の総称です
野生種のエドヒガンの改良種「シダレザクラ」や「ベニシダレ」「ヤエベニシダレ」、エドヒガンと他の品種の交雑種「ウジョウシダレ」「カミヤマシダレザクラ」のほか、オオヤマザクラの仲間の「シダレオオヤマザクラ」、オオシマザクラから生まれた品種の「サトザクラ(シダレヤマザクラ・センダイシダレ)」などがあります。
元は突然変異で、枝の組織が固くならなかったことで、自重を支えられず枝垂れた形になったといいます。
下から見ると、桜の花が滝のように流れ落ちてくる、迫力のある美しさが、偶然の変異によるものだとは驚きですね。
しだれ桜の寿命
一番身近な桜の品種「ソメイヨシノ」の寿命は、60年ほどだと言われています。
実際、ソメイヨシノは樹齢40年を超えると、急激に衰弱するものが多く、幹の内部がすかすかに朽ちてしまうことがおおいようです。
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一方、福島県の「三春滝桜」の樹齢は1000年以上、千葉県市川市の真間山弘法寺にある「伏姫桜」は樹齢400年以上、奈良県宇陀市にある「又兵衛桜」は樹齢300年以上と、100年を優に超えるしだれ桜が各地にあります。
「シダレザクラ」や「ベニシダレ」「ヤエベニシダレ」といった品種の元になった「エドヒガン」は長寿になる特性が強いことから、長寿の特性を受け継いでいることが多いようです。
先述の「ソメイヨシノ」も「エドヒガン」と「オオシマザクラ」から生まれた品種ですが、単一品種を接ぎ木で増やしたクローンであるため、寿命が短いのです。
しだれ桜の育て方
長い時間をかけて巨木となった、各地のしだれ桜の迫力も素敵ですが、庭木として自宅で育てることもできます。
品種としては、「ウジョウシダレ」は5~10mと、しだれ桜の中では比較的コンパクトな品種です。
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「ヤエベニシダレ」も、樹形が整いやすい品種として庭木におすすめの品種です。
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しだれ桜の植えつけ時期
植えつけ適期は休眠期の11月か2月下旬から3月です。
12月~2月の真冬は、植えつけのストレスに寒さや雪が重なると、木にとって大きな負担になるので避けましょう。
地植えはもちろん、鉢植えでも育てられます。
鉢植えの場合は、苗木よりも2まわりほど大きい深鉢を使用します。
用土・肥料
排水性・保水性がよく有機質の豊富な土で育てます。
地植えでは、元の土に腐葉土や堆肥と緩効性肥料を混ぜ込んでおきます。
追肥は、花芽が展開する前の2月~3月と花後の5月頃に緩効性肥料を与えましょう。
水やり
地植えであれば、植えつけ直後意外は雨水だけで育ちます。
初夏~初秋で雨が少ない時期は、土が乾燥しているときにはたっぷり水やりします。
誘引
樹形を整えるため、植えつけ後には誘引が必要です。
誘引の手順
- 苗木の長さの2倍程度の支柱を立てる
- 主幹の上部を布で巻いて、支柱に結わえる
- 上部の新枝の先を同じ支柱に結わえる
このように誘引することで、苗木全体がくたっと倒れないで育てることができます。
見た目はもちろん、風通しがよくなって病害虫から苗木を守る意味でも、必要な作業です。
剪定
枝垂れ桜の剪定は冬に行います。
まず目標の高さまで育ったら、それ以上高く伸びないように主幹を切る「芯止め」です。
芯止めを行うと、高さを抑えられるうえ、枝数が増える効果もあります。
そして、根元から生えた枝(ヒコバエ)や枝先から内側に伸びる枝、枯れ枝、混んだところでは細い枝を根元から切って「間引き剪定」をします。
桜は剪定に弱く、大幅に刈り込むと枯れてしまうことがあります。
間引き剪定を適切に行って、なるべく細いうちに切り落しておきましょう。
また、切り口から菌が入って病気になることを防ぐため、剪定ばさみは消毒し、剪定後は「トップジンMペースト」などの癒合剤で保護することをおすすめします。
植え替え
鉢植えで育てる場合、2~3年に1度の間隔で、植え替えが必要です。
根詰まり・根腐れを防ぐことが目的です。
植え替えは、植えつけ時期と同じく11月か2月下旬から3月ごろに行います。
植え替えの手順
- 今の鉢より一回り大きな鉢を用意する
- 鉢から木を出して、半分ほど土を落とす
- 混み過ぎた根をはさみで切って整理して植え替える
しだれ桜の花が咲かない!
しだれ桜を植えて、翌年から花が咲くことはほとんどありません。
環境にもよりますが、植えつけ後3年ほどは、苗木の成長が優先で花が付かないことが考えられます。
以前咲いていた花が咲かなくなった場合は、剪定の失敗や、環境の変化が理由かもしれません。
剪定が原因と考えられるときは、1年剪定を控えて様子を見る、庭木屋さんに剪定してもらうことを検討してみて下さい。
環境の変化があるときは、日当りのいい場所へ移植・移動する、土壌改良を試してみましょう。
数百年生きることもあり、成長も草花のようにすぐにというわけにはいかないしだれ桜ですが、環境が整えば長期間、美しい姿を楽しめます。
憧れのしだれ桜の栽培に挑戦してみてはいかがでしょう。