庭木や公園樹として親しまれているサンシュユは、観賞向けの特徴を兼ね備えた樹木です。
鮮やかな花色や赤い実のほか、日光が映えやすい樹皮などサンシュユの魅力は幅広いため、庭木にサンシュユを選ぶ人は少なくありません。
このように魅力的なサンシュユの剪定を失敗しないためには、果たしてどのような剪定方法の実践が推奨されているのでしょうか?
サンシュユの基本情報や育てる際のポイントを押さえた上で、気になる剪定方法と注意事項などを確かめてみましょう。
サンシュユとは
中国や朝鮮半島が原産で江戸時代に日本へ持ち込まれたサンシュユは、アキサンゴやヤマグミとも呼ばれるミズキ目ミズキ科の落葉小高木です。
サンシュユは生薬になる薬用植物に該当しますが、日本では鮮やかな花色や赤い実を踏まえ、観賞用の庭木として主に植栽されています。
耐暑性に優れているので園芸の初心者でも育てやすく、サンシュユの樹高は庭木に適した5メートルから8メートルほどになっています。
2月から3月に黄色い小花が集まった散形花序を株全体で開花させるため、サンシュユには春小金花という異名も付けられています。
秋に熟すサンシュユの赤い実は栄養豊富な特徴を持ち、生薬やアンチエイジングに役立つと言われますが、渋みが強くて生食に向いていません。
また、サンシュユは互生葉序している上に葉は卵状楕円形で両面に毛があり、薄茶色の樹皮は薄く剥がれ落ちていきます。
樹皮の味わい深さもサンシュユの魅力に数えられますから、観賞価値が高い樹木を育てたいのならサンシュユの栽培をおすすめできるでしょう。
サンシュユを育てる際のポイント
サンシュユは基本的に水持ちの良い肥沃な土地を好みますが、丈夫な樹木なので日当たりさえ良ければ植えつけ場所は重要視しなくても構いません。
元肥を施した植え穴への地植えは、1月から2月といった厳寒期を避けつつ、落葉した休眠期を選んで実行してください。
株が若いうちには落葉期を除いて水やりをたっぷり行い、サンシュユの開花を期待したい際には1月から2月に寒肥を与える手順が推奨されます。
地植えでサンシュユがしっかり根付いた後には、水やりをほとんど行わなくても問題ありません。
夏に雨が長期間降らず、乾きが進んでいる場合に限ってサンシュユへの水やりを検討する程度に控えることが大切です。
なお、晩秋から初冬にサンシュユの実は完熟しますが、この実から採取した種をすぐにまいても時期的に発芽はほぼ見込めません。
採取した種は湿らせながら密封した保管を続け、春になってから水洗いした上で種まきを行いましょう。
サンシュユの剪定に適した時期
サンシュユは剪定に強い特性を持つため、2月から3月の開花期以外であれば、基本的にいつでも剪定可能です。
開花後もしくは落葉期の1月から3月が、サンシュユの代表的な剪定時期として知られています。
ただし、開花後を剪定のタイミングとして選ぶ場合には、サンシュユの果実を切り落とす結果につながりかねません。
落葉期なら花芽がはっきり分かりますから、サンシュユの果実や花芽を残したいときには開花後よりも落葉期の剪定が適しています。
サンシュユの剪定方法と注意事項
丸く刈り込む剪定方法も選べますが、サンシュユの仕立て方では美しさを観賞しやすい株立ち状の自然樹形が望ましくなります。
もちろんサンシュユが自然樹形で枝を広げるためには、庭木で植える際に相応のスペースが求められます。
ほかの樹木とサンシュユの枝が当たってはいけませんから、植えつけ時にはサンシュユを離れた場所に植えることを心がけましょう。
自然樹形を念頭に置くサンシュユの剪定では、残す枝に注目する方法の枝透かし剪定が大いに役立ちます。
日光を遮る混み合った枝や細い枝のほか、枯れ枝を付け根から切り戻し、株の内側にある枝へ日光が届くように剪定を行ってください。
枝透かし剪定を上手く実践できれば、サンシュユの生長や花付きが良くなっていきます。
もしも花芽が付かない徒長枝が長く伸び過ぎた場合には、枝透かし剪定ではなく切り戻し剪定も活用できます。
サンシュユの切り戻し剪定では、伸びた徒長枝のみを短く切り戻し、短く太い枝を全体的に増やしていくことがポイントです。
短く太い枝を含めて枝分かれの付け根から切り詰めると、サンシュユの花付きを悪化させる要因になりかねません。
因みにサンシュユのひこばえを見つけたのなら、剪定時期とは関係なく株元から切り取って対処できます。
サンシュユに発生する病気や害虫
サンシュユは、一般的に病害虫の被害を避けやすい樹木に当てはまります。
とは言え、日当たりや風通しなどの栽培環境が悪化したり、必要不可欠な剪定を怠ると以下のような病害虫の被害があり得ます。
★葉や茎に白い斑点が発生するうどんこ病
★葉の裏に住みついて食害を起こすアオイラガの幼虫
うどんこ病は光合成を阻害する病気なので、サンシュユにうどんこ病の症状が現れたときには薬剤を散布しなくてはいけません。
アオイラガの幼虫は食害も気になりますが、何よりも触れるだけで激しい痛みを感じることや、触れた患部が腫れ上がることに注意が必要です。
サンシュユの葉などに住みついたアオイラガの幼虫を見つけたら、触れないように気をつけながら殺虫スプレーを使って駆除しましょう。
まとめ
鮮やかな花色や赤い実だけでなく樹皮の味わい深さも楽しめるサンシュユは、観賞を目的とした庭木や公園樹に選ばれやすい落葉小高木です。
日当たりの良い肥沃な土地でサンシュユはよく根付きますが、定期的に剪定をしないと枝が混み合って生長に悪影響が出てきます。
サンシュユの剪定時期は開花期以外ならいつでも構わないものの、失敗のリスクが気になる場合には落葉期の剪定が向いています。
自然樹形のサンシュユを維持していきたいのであれば、枝透かし剪定を中心に実践し、部分的に切り戻し剪定を併用しましょう。