コブシとシデコブシはユニークな集合果を付けるモクレン科の植物ですが、これらにはどのような違いが見て取れるのでしょうか?
育てる前に知っておきたいコブシとシデコブシの違いや見分け方を確かめてみましょう。
コブシとは
日本各地や韓国の済州島が原産で山地などに自生するコブシは、耐寒性と耐暑性を兼ね備えたモクレン科モクレン属の落葉高木です。
樹高は低いものでも8メートルほどあり、成長が進んだコブシなら樹高20メートル程度にまで達します。
コブシは日当たりと水はけの良い場所を好みますが、大きく育つことから広い場所の確保がコブシを栽培する際の前提条件に含まれます。
総じて鉢植えでの栽培は適していないため、コブシを育てるのであれば、将来的な成長を見据えつつ庭木として植えなくてはいけません。
加えて、3月から4月頃の開花期には枝先に香気のある花が咲き、早秋にはコブシという名の由来にもなった特徴的な集合果が付きます。
この集合果は秋頃に裂け始め、中から白い糸を引いた赤色の種が垂れ落ちますが、コブシの種子は熟すと黒く変わります。
なお、コブシは基本的に成長のスピードが遅く、コブシの開花そのものも毎年欠かさず行われるとは限りません。
コブシの特徴
コブシは直立性の広葉樹であって、剪定を一切しない場合には自然と広卵形の樹形になっていきます。
剪定でコブシの樹形を整えたいときには、開花後の新芽が出る前に実行し、不要な枝を基部から切り落とす方法を活用しましょう。
コブシは互生葉序している上に、葉は広倒卵形で先端が短く尖り、葉の縁に鋸歯は見られません。
葉身の長さは6センチから14センチで、葉柄は1センチから1.5センチあり、葉の裏側にはやや細毛が付いています。
また、コブシにおける純白の花は花弁6枚で構成されていますし、梢いっぱいに花が咲くこともコブシの代表的な特徴に該当します。
さらに長楕円形状の集合果は緑色から赤色へと熟していきますが、中の種が垂れ落ちる前に集合果のまま落下する場合も珍しくありません。
花蕾や花が生薬や香水の材料になることや、赤い種子で果実酒を作れるなど、コブシは用途が多い植物としてもよく知られています。
シデコブシとは
日本固有種で愛知県や岐阜県のほか、三重県に分布するシデコブシは、モクレン科モクレン属の落葉小高木です。
シデコブシは栽培環境として少し湿気がある日向を好み、樹高は1メートルから8メートル程度なのでコブシほど大きく育ちません。
3月から4月頃の開花期には分枝した枝の頂部に白や薄紅色の花を咲かせ、開花後にはコブシと変わらずデコボコした集合果ができます。
コブシと同じようにシデコブシも成長が遅い性質になりますから、シデコブシの栽培時には焦らず大切に育てていきましょう。
シデコブシの特徴
庭園樹や公園樹として見かける機会が多いシデコブシは、自然に樹形がまとまりやすい特性を持った直立性の広葉樹です。
剪定を全く行わなくてもシデコブシなら問題ありませんが、樹形を整えたい場合には開花後の4月から5月もしくは12月から1月頃の剪定が向いています。
コブシと同じくシデコブシは互生葉序していて、葉は長楕円形で先端も円形に近く、葉の基部は楔形で縁に鋸歯は出ていません。
葉身の長さは5センチから10センチほどであり、葉柄は0.2センチから0.5センチ程度なことに加え、葉の裏側には細毛が見られます。
また、シデコブシの花は花弁12枚から30枚で構成される特徴を持ち、ひとつひとつの花弁は細長いリボン状になっています。
シデコブシは準絶滅危惧の指定を受けている
土地造成などが進んだ結果としてシデコブシの自然個体群は減少を続け、かつてはレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されていた経緯があります。
レッドリストの見直しにあわせて準絶滅危惧に指定されましたが、自然環境におけるシデコブシの保全対策が必要な状況は未だ変わっていません。
主要な自生地であっても既に絶滅が起きていますので、シデコブシの自然個体群は生きている化石とも称されています。
コブシとシデコブシの違いや見分け方
コブシとシデコブシを見分けたい場合には、以下のような違いに注目してみましょう。
★コブシの樹高は20メートル程度まで育つがシデコブシの樹高は8メートルほどにしかならない
★コブシの葉は葉身や葉柄が長くシデコブシの葉はコブシよりも小振りになっている
★コブシの花には花弁が6枚しかない一方でシデコブシの花は花弁12枚から30枚で構成されている
★コブシは絶滅を危惧されていないがシデコブシの自然個体群は準絶滅危惧に指定されている
コブシとシデコブシを比較すると、樹高や葉の大きさに加えて、花弁の枚数や絶滅危惧指定の有無といった内容に違いが見て取れます。
絶滅を心配されていないモクレン科モクレン属のコブシは、広卵形の樹形になりやすい直立性の落葉高木です。
コブシの樹高は育つと20メートル程度にも達し、3月から4月頃の開花期には花弁6枚で構成された純白の花が咲きます。
対して、自然個体群が準絶滅危惧に指定されているシデコブシは、庭園樹や盆栽にて扱われやすい落葉小高木になります。
シデコブシの樹高は育っても8メートルほどにしかならず、3月から4月頃の開花期には花弁12枚から30枚にもなる白や薄紅色の花を観賞できます。
いずれにしても開花後には特徴的な集合果が付きますので、花の特徴や集合果に興味がある人はこれらの栽培に挑戦してみましょう。