色合いや造形が特異なパフィオペディルムは、交配品種の開発が盛んで、古くから世界的に愛好家が多いラン科植物です。
こうしたパフィオペディルムの育て方やお手入れ方法のほか、注意すべき害虫についてまとめてみました。
パフィオペディルムとは
東南アジアが原産で袋状の唇弁がユニークなパフィオペディルムは、ラン科パフィオペディルム属の多年草です。
袋状の唇弁はもちろん昆虫を誘い込みますが、あくまでも受粉を目的とし、食虫植物のように虫そのものを食べることはありません。
パフィオペディルムの草丈は15センチから1メートルほどになり、地面に根を下ろすだけでなく樹の上であっても張り付いて育ちます。
また、パフィオペディルムの開花期は品種に応じて差があり、冬に花が咲くものだけでなく春から夏に開花する品種も見られます。
かつてはさえない花色が主流でしたが、品種改良が進んで明るい花色を持つ品種が次々に誕生し、現在では熱狂的な愛好家も増加しています。
総じて人気が定着したラン科植物に数えられるものの、本格的な栽培の難易度は高めなので注意しなくてはいけません。
パフィオペディルムには様々な交配品種がある
パフィオペディルムにおいては、ロスチャイルディアナムやデレナティイといった原種の栽培が盛んに行われています。
その一方で園芸的な人気にあわせた交配品種も豊富に存在し、このような交配品種は以下の6種に分類できます。
★円形に近い整った花型を持つ整形タイプ
★交配品種の中でも代表的な分類で明るい色合いの単独花が美しいモーディエタイプ
★葉の斑紋と直立する長い花茎が特徴のパービセパラムタイプ
★葉に斑紋があって1つの茎に数個の花を咲かせるブラキペタラムタイプ
★葉に斑紋が入らず複数花の特徴を備える多花性タイプ
★分類がそもそも難しい個性的なその他タイプ
パフィオペディルムの原種は120種類ほどですが、交配用の種親として希産種の価値は非常に高くなっています。
観賞価値を追求した交配品種は多く、パフィオペディルムには魅力的な品種が揃っているといえるでしょう。
パフィオペディルムの育て方
パフィオペディルムは日光をそもそも好まないため、植えつけ場所や鉢植えの置き場は1年中半日蔭になっているところを選びます。
直射日光は葉焼けにつながりかねず、冬でもカーテン越しの日光を当てる程度に抑えることが大切です。
なお、パフィオペディルムには湿り気を維持可能な用土が推奨され、薄めた液体肥料の控えめな使用が向いています。
耐暑性に優れていても耐寒性が弱い特性を併せ持ちますから、冬は10度以上の気温を保てる場所で育てましょう。
さらに水は霧吹きでこまめに与え、年間通して用土が少し湿っている状態を目指します。
もちろん夏場の生長期には水やりを増やし、新芽を育てることを忘れてはいけません。
パフィオペディルムの植えつけや植え替えは春に行いますが、その際には根をなるべく折らないように心がけてください。
パフィオペディルムのお手入れ方法
パフィオペディルムの花を毎年しっかり咲かせるには、花が咲き終わった後の花茎切りが必要不可欠です。
花が咲いた茎を付け根から切り落とし、新芽や新しい花に養分が用いられるように手入れしましょう。
次の花芽を確認したら、明るい方向に向かって咲く花の性質を踏まえつつ、支柱立てを実践します。
花芽が伸びて蕾の重さによって茎が垂れてきたときには、支柱に引っ掛ける形で茎を支えると良いかもしれません。
手入れを含めた管理は複雑になりやすく、パフィオペディルムを専門的に育てている人も多くなっています。
パフィオペディルムにて心配される病気や害虫
パフィオペディルムにとって注意が必要な病気は、細菌が原因になって根元から腐り始める軟腐病です。
軟腐病にかかってしまうと治療が難しくなるため、株が生長する時期には消毒薬の散布を行って予防に努めなくてはいけません。
もしも軟腐病が発生している根を見つけたときには、被害が拡大する前に付け根から切り取る方法で対処してください。
また、庭木や果樹の害虫として知られるカイガラムシは、パフィオペディルムであっても同様に被害を受けやすい害虫です。
カイガラムシの幼虫は殺虫剤で駆除可能なものの、成虫になると硬い殻で覆われるので薬剤が効きづらくなってしまいます。
パフィオペディルムにカイガラムシの成虫が寄生した場合には、ガムテープを使う方法やブラシでこすり落とす方法で排除しましょう。
ラン科パフィオペディルム属のパフィオペディルムは、袋状の唇弁と交配品種の多さが特徴の多年草です。
ユニークな唇弁と複雑な色合いは園芸的に人気を集め、パフィオペディルムは四大洋ランのひとつにも数えられています。
日光を好まない上に耐寒性が弱いため、育て方や管理が相応に難しく、初心者よりもガーデニングの中級者以上に推奨されています。 栽培の成功時には喜びが一際大きいラン科植物になりますから、興味がある人はチャレンジ精神を持って取り組んでいきましょう。