私にとって沈丁花は特別な花です。この花を見ると幼いころの思い出が呼び戻されます。小さい時に生まれ育った家の庭に母がお祭りで買った小さな沈丁花の木を植えてくれました。
この花はいくつもの小さな花が寄り集まって一つの花になっています。花が咲いている季節はそばに行くとふわ~っと甘い香りがします。私は小さな細かい花が一つの花の中にたくさん集まっているのがとても可愛らしくて大好きでした。
私はこの大好きな花を庭中に植えつくしたいと思い、この1本の木から枝を切り取って一本一本間隔をあけてそのまま家の周りに差しました。母に沈丁花は挿し木が出来ると聞いたからです。私の記憶ではこの木が植えてあった場所は少し湿った日当たりもそんなに十分ではなかった所だったと思います。
なので日陰でもそだつのかと思い、家の裏の方にも挿し木をしてみました。冬だったと思いますが、寒かった記憶があります。母はこの季節では無理だと言っていましたが、なんと!5~6本くらいは根付いたと思います。根付く確率が高い丈夫な木なのだと思います。
枯れてしまった所にはまた挿し木をしました。幼かったせいか一途に頑張った記憶があります。そして私が当時庭中に沈丁花を植えつくしたいと思ったのにはもう一つ理由があります。
それは大きく成長するとこの木は枯れてしまうということを聞いたからです。私が大好きなこの木が枯れてしまう?!なぜ枯れるのか?母もそれがなぜなのかはよくわからないと言っていました。子供ながらいろいろ考えてみました。
虫がつくのでしょうか?それともこの木には寿命があるのでしょうか?年を取った木は寒いと耐えられないのでしょうか?地植えだったので肥料は一度も上げたことはありませんでした。
なぜ枯れるのか?今だにそれがなぜなのかはわかりません。ただうっすらと記憶にあるのですが、蛾のようなチョウが飛んできていたような気がします。木の中か土の中に幼虫がいてそれが孵って蛾になってついていたのがもしれません。
それが枯れる原因だったのでしょうか?
幼かった私には、この木が枯れてしまうことの悲しさよりたくさん根付かせて絶やすことのないようにすることが大切なことだと考えていたのだと思います。私の実家は千葉にありますが、現在はこの家を離れて暮らしています。
家も建て直したため、もう沈丁花もありません。幼かった頃はこの木を良く田舎のお墓でも見ました。現在はどうなっているのかよく知りません。昔は良く見かけたこの木もほとんど見かけなくなってしまいました。